チェチェンへの旅 2008年秋

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08
アルハンカラのある新しい家。戦災で古い家は、破壊され、敷地内に残ったのは1本の胡桃の樹だけだった。家の
住人は、戦争中、カザフスタンのアルマトゥに避難した。2004年に戦災補償金が支給され、それを全て建材購入費
に充てた。その後。こつこつと、自力でこの家を建てた。当時は、また戦闘が再び激化するかと、多くの人が建材
購入を躊躇っていた。それで建材は、安かった。建材一般の価格が高騰した今では、とても無理だと、未亡人は言う。

新居建設に精力を使い果たした主人は、新築の数ヶ月後に急逝してしまった。働き盛りのあるいは若者に、医者が
原因を説明できない、突然死がチェチェンではとても多いと聞いた。



09
アルハンカラのある家の土台。戦争前、ここに建っていた家は、完膚なき破壊を受けた。女主人の言葉。「またきっと、
役にたつ日が来るでしょう。息子が新しい家を建てるかもしれないし。」



10
急逝した家の主人の夢は、この新居で牛を飼う事だった。3頭の牛が飼える牛舎が用意されていた。彼が他界して、
夢は宙に浮いた。私は、戦災で負傷した牝牛、ゾイカの治療をハッサン医師に頼んだ、この村の女村長のことを
想い出した。そして、彼女が、村人のために奔走して、住民たちの当然の権利を守ろうとして殺害された事件のことを。

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