ダゲスタン

 ダゲスタンには30以上の民族集団が暮らしてきた。人口は180万で、アワール人が32%、ダルギン人15%、クムイク人12%、
レスギン人11.6%、タバサラン人4%、ノガイ人8%、アゼルバイジャン人4%、ロシア人3.2%、残りを他の少数民族が分け合って
いる。幾つかのダゲスタンの村は、村人自体が幾つかの民族集団に分かれていることもある。

 今日、ダゲスタンでは様々な民族集団が存在しているにもかかわらず、また摩擦はあるものの深刻な衝突というのは見られない。
レスギン、クムイキ、ノガイ、ダルギンあるいはタバサラン人などは、自然の富の民族集団間での配分比率と自主的な処分権限
に関して不満を持っている。また、これらのダゲスタンの民族集団は、アワール人に対抗するという点では、お互いに支持しあって
いて、政治的な自治を望んでいる。

 それぞれのグループは、自らの民族の利害を第一義的に考えており、それを守るためなら、武器を手にして戦うことをためら
わない。このため、全てのグループが完全武装で固めている。ダゲスタンにおいては武器を入手するのは難しくない。ダゲスタン
の町ハサブユルトでは、カラシニコフ自動小銃は250米ドル、ピストルなら150米ドルで買える。武器は市場で公然と売られている
のだ。いかなる二つの民族間の諍いも、内戦に発展する懸念が存在する。

 レスギン人はダゲスタン南部とアゼルバイジャン北部に居住し、公然と分離独立して自らの共和国を樹立する思惑を語っている。
アゼルバイジャンの急進的なレスギン人は、独立闘争を行い、地域組織「サドワル」を結成している。この組織の構成員により、
アゼルバイジャンにおける地下鉄爆弾事件、秩序攪乱・サボター ジュ事件などが挑発されてきた。カフカス情勢の分析を行って
きた専門家は、こうした事件の影にカフカス情勢を不安定化させようとするロシアの影があることを指摘している。

 アゼルバイジャンは、カラバフ問題を抱えるだけでなく、北ではレスギン人問題を、南にはタルイシ人の問題を抱えている。
これらの問題は、アゼルバイジャンが領内にロシア軍の軍事基地を置くことを認めない内は、常に揺さぶりの種として使われる
だろう。しかしながら、ダゲスタンではイスラーム教の力が繋ぎとめる役割をして、状況を危機的なものにならないようにしてい
る。

 ダゲスタンの夫婦(1904年 プロクーディン・ゴルスキー撮影)

参考リンク:
ダゲスタン共和国 wikipedia 日本語版より充実した英語版・ロシア語版をお勧めします。

北コーカサスの武力衝突の大部分は現在、ダゲスタンで発生しています。ロシアの人権団体がまとめた、2012年4-6月のこの地域での
紛争の犠牲者総数は約360名でしたが、ダゲスタンの犠牲者が半数を超す状況でした。これらの犠牲者には、ロシア側の治安部隊要員、
対抗するイスラーム武装集団の参加者、戦闘に巻き込まれた一般住民が含まれています。


カフカスの民族問題 TOP 
題の根源 に戻る
チェチニア へ